2025/11/03 12:00
今回の旅のテーマは「節句」。
飾るだけではなく、もっと手軽に、日々の暮らしの中で「節句」を楽しむ方法はないだろうか。そんな思いから、産地を訪ね、モノづくりの現場にヒントを探しに行くことにしました。今回はクリエーターの方にもご同行いただき、新しい「節句」のかたちを模索する小さな旅となりました。
早朝、唇がピリピリするアレルギー反応で目が覚めたこの日。鏡を見ると、少々しもぶくれの顔。よりによって出張の朝に……と、気分もどんよりしましたが、そうも言っていられません。幸い、腫れも徐々に引いて、7:56発の盛岡行き「はやぶさ」号に乗車。人生初の古川駅で下車し、レンタカーで鳴子温泉へ向かいます。温泉旅行ではありません、念のため(笑)

箸

いよいよ鳴子温泉♨ 橋の欄干に鳴子こけしが♡ ちょうど信号があり、一旦停止のシャッターチャンス♡
桜井こけし店へ
今回訪ねたのは、会社員時代に大変お世話になりながらも、足を運ぶ機会がなかった「桜井こけし店」。
「家庭画報」通販時代には、雛の段飾りやお正月の鏡餅飾りなどを扱わせていただきました。真摯なモノづくりに裏打ちされた伝統的な人形の佇まいと、挑戦を惜しまない工房ならではのオリジナリティ。どの作品にも、確かな手のぬくもりが感じられます。


現地集合した二人と、桜井こけし店のみなさんとまずは腹ごしらえ。お隣の老舗そば店「登良屋」(とらや)さんへ。創業100余年、初代は漆器職人だったそうです。

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おススメの「鴨南つけ蕎麦」をいただく。
旅の相棒・よつめ染布舎 小野豊一さん
今回の旅をご一緒したのは、広島を拠点に活動する型染作家「よつめ染布舎」の小野豊一さん。各地の文化背景を深く掘り下げ、独自の視点とデザインで染めの表現を広げ続けているアーティストです。そんな小野さんとなら、「節句」の世界にも新しい風が吹くのでは――。ちょうど「みちのく」ひとり商談道中のタイミングで、現地集合となりました。

潟沼(かたぬま)でツーショット。酸性のカルデラ湖には、ほぼ生物はいないとか。真っ青な湖面が神秘的でした。ボートで散策し、企画会議をしたり。
こだわりの鳴子こけし
桜井こけし店では、材料の「ミズキ」を自ら育てるところから始まる、地道で丁寧なモノづくりが続いています。車で山中に向かうこと10分ほど。工房では、6代目の桜井尚道さんが、モノづくりの関して、静かながら熱く語ってくれました。

ポットに播種して、育苗されていた。早春に伐採すると、水が滴るというところから「ミズキ」という名がついたとか。

右が6代目の桜井尚道さん、左が前職から窓口をしてくださっている中村仁美さん。

翌日のランチは、工房を訪ねたのち、窓口・中村さんに案内していただき、地元の人気店「山の幸特売店 大久商店」へ。土の香りを残すキノコや木の実がずらりと並び、壁にはツキノワグマの皮まで! 野性味あふれる店内で、小野さんは熊汁定食、私たちはキノコ汁定食をいただきました。
圧巻!2,778点のこけし
訪問の数日前、鳴子温泉では「全国こけし祭り」が開催されたばかり。「日本こけし館」ではその名残として、こけしオークションが行われていました。ひと口100円からの入札に挑戦し、「これだ!」と思う一点を選んで投票。数日後、「落札のお知らせ」が届いたときは驚きました。



落札した鳴子こけし。5代目 桜井昭寛さんのものだった。


工房では、5代目・桜井昭寛さんがミズキの木を削る姿も披露してくださいました。鉄棒を自ら鍛冶でカスタマイズして作り、工人それぞれが、オリジナルの道具を使うものだそう。道具にも、作り手の哲学がにじみます。
いな草と木賊(とくさ)
磨きの工程で使われる植物「いな草」と「木賊」。どちらも天然素材を活かした伝統的な道具です。
青々とした木賊は見かけますが、よく乾かされた枯れ色の木賊を見るのは初めて。いな草は、地元農家さんから分けてもらった稲を乾燥させて作るとのこと。私自身も稲作をしているので、田植えしきれずに廃棄していた稲の活用法として「なるほど!」と発見がありました。きちんと乾燥させれば、フローリング磨きにも使えるのかな?!
青々とした木賊は普段目にすることがあっても、乾燥したものを見るのは初めて。いな草ともども、天然のヤスリになる。
いな草。田植えはせずに、このまま乾燥させて、ヤスリ代わりにするのだそう。いわゆる「水ヤスリ」よりも、光沢感が異なる仕上がりに。「桜井こけし店」さんでは、時間がかかっても天然のヤスリにこだわって作られている。
おわりに
今回の出張では、「桜井こけし店」さんの代表的な「こけし」を中心にお話を伺い、「ひいな人形」についての深掘りまでは至りませんでした。
けれども、東北行脚中の小野さんの手による、新しい「節句」の迎え方については、これからも継続的に探っていきたいと思います。
私たちの“新しい節句”は、まだ旅の途中です。

おみやげには、「桜井こけし店」さんのこけしと達磨を。独特の彩色が印象的です。

桜井こけし店のカフェスペース(不定期)から鳴子温泉を一望。


